第9回リハ工学カンファレンス1994

車いす用手袋の試作

東京都補装具研究所  岩波君代
総合せき損センター  松尾清美

1、はじめに
 ハンドリム駆動式の車いすを効率よく操作するには、手を保護することと同時にハンドリムの摩擦抵抗を少しでも大きくする手袋が要求される。
 特に、頸随損傷者(以下頸損者)の多くは、ハンドリムをしっかり手で握って操作できないため、圧してこすることを繰り返すことで駆動させる。
 たとえ上肢のカがあっても、作用点の摩擦が得られなければ、力を伝達することは難しい。従って段差越え、坂道、雨天の走行時には、手袋の手掌部表面の素材が、ハンドリムに対して摩擦の大きいことが要求されると考える。
 現在、頸損者に適した車いす手袋で満足する市販品はないといわれている。
 ここでは対象を頸損者に限定し、摩擦が得やすいネオプレーンゴム素材を利用し、効率よく駆動でき、かつ自分で着脱しやすいことを目的とした手袋を試作し(―次)、試用テストを行った。
 その結果、サイズが多少大きすぎて正しい結果が得られなかったところもみられたが、手袋とハンドリムとの摩擦については、確かにすべり止めとしては良い結果であった。しかし、実生活場面ではさまざまな状況が条件としてあり、効率よく駆動させるための方法は単に摩擦が大きいことを考えるだけではないことがわかった。
 そこでさらにテスト結果をもとに、デザイン・素材・サイズの検討を行い、二次試作を行ったので報告する。
2、着脱自立上の問題点
 ―般に手袋は、防寒、作業、装飾用に手を覆うものであり、用途・デサイン,季節に応じて素材が選ばれている。
 車いす使用者の多くは、市販されている手袋の中で用途が似ているドライバー用、サイクリング用、ゴルフ用や軍手など、またそれらをさらにリフォームしたものを利用している。
 しかしC5〜7レベルの損傷者は、手指の筋力が弱いことと同時に強い屈曲拘縮が見られる場合があり、5本指を簡単に通すことができない。しかも手袋の入口から手をつっこむことが難しく、中で指が曲がったままになって、指を―本づつはめる動作にかなりの時間を要す。
3、―次試作
3ー1、素材の選定
 手掌部の表面素材の主な条件として次の4点をあげた。
@車いすのハンドリムに対して、手袋を圧しながらすぺらせた時の手掌部の表面素材の摩擦が大きいもの。
A手掌部をたたきつけながらこぐため、耐久牲のあるもの。
Bぬれても乾きやすく、変質しない。
C軽い。
 ここでは上記の条件を満たす素材として、ネオプレーンゴムの片面にメッシュの凹凸型が焼きつけられたもの (シャークゴム)、もう―方の片面にナイロンジャージを張ったものを選択 した。本素材は、石油系合成ゴムを独立発砲させたもので、水に強く、軽く、弾力性があり、かつすべり摩擦が大きいが、通気性のないことが欠点である。ゴムシートの厚さは4mmとした。
3ー2、構造
 手袋の構造は、5本指を少しでも入れやすくするためにオープン式でマジックで巻き付けるタイプとした(図1)。
 5本指のうち母指だけは独立させ、他の4本は手掌部の内側にアーチをつけた指通しを取りつけた。甲側はぺル トを二股にしてマジックテープで固定 できるようにした。
3ー3、試用テスト結果
 頸損者7名についてテストを行った。全体的にサイズが多少大きめであったが、手袋をハンドリムに当てた時の摩擦、布地の肌触りについては良い結果であった。
 しかし、ネオプレーンゴムの特性である適度な弾カ性が、ハンドリムでブレーキをかけすぺらせるときに手のひらと手袋に微妙に浮きを生じさせてしまうこともわかった。また指の出し入れについては困難な者もいた。
 またハンドリムを押し当てる位置が、個人差はあるものの、手のひらの中心よりもむしろ手首側であるため、手首側への丈の長さが足りなかった。
 その他、手掌部のゴムが厚すぎるため、手関節屈曲の筋力が弱い者は、はめたままで別の動作が困難であること もわかった。
4、二次試作
 ―次試作の使用テスト結果をもとに デザイン・サイズを再度検討し、試作を行った。
 基本デザインは、指先のないミトンタイプである(図2)。
 着脱動作が自分で可能なように母指のみ分離させ、4指は―括して巻きつ けるものとした。素材は水洗いが可能な条件の中でシャークゴム(内張りに綿プロ―ド)、すぺり止め効果が高いといわれる塩化ビ二―ル素材の2種を使って製作した。丈は、手首側を長くした。今後はテストを行い、自分ではめやすく車いすがこぎやすい手袋の製作を行う子定でいる。
5、おわりに
 頸損者に適した車いす手袋の試作、使用テストを行う中で、車いすのこぎ方や手袋のはめ方に個人差がありながらもかなり共通することがわかった。最後になりましたが、モニターテストにご協カ頂きました頸損の方々、製作に当たりご協カ頂きました(有)庭野商会に感謝の意を表します。